「理系のためのクラウド知的生産術―メール処理から論文執筆まで」 を読んでみました

2014-07-19(Sat) Review

今年の3月頃にこんな本を読んでました。

理系のためのクラウド知的生産術―メール処理から論文執筆まで(ブルーバックス)
4062577534

ASIN : 4062577534

Amazonで詳しく見る
Powered by Amazon Quick Affiliate(JP)

Lifehacking.jp の中の人 @mehoriさん の著書で、(知らなかったのですが、北極の気候変動の研究が本職とのことで)研究にまつわる情報共有とクラウドサービスの扱い方の解説がされています。

gmailに始まるGoogleのサービスの具体的な使い方、その他のクラウドサービスも紹介されています。Evernoteの紹介、Remember The Milkでのタスク管理などなど。

Mendelyという論文管理サービス/ソフトの解説がありがたかったです。(Mendelyは時間の余裕が出てきたので使ってみようかと)

ただこの本はもっと大事な話がされていて、情報に飲まれた状態がいかに虚しいことかが冒頭に語られていたところですね。

クラウドサービスは時間を作るための手段

しかし現実の「理系研究者」の仕事は、なるほど知的で専門的かもしれませんが、多くの人の仕事ぶりはスマートというには程遠いことを、私は今まで多くの科学者のオフィスを見てきた経験から知っています。 (P.3)

ずいぶんとドキッとする言い方です。

ある人は、故障でパソコンのデータがすべて失われた際に、多少苦しそうでしたが「これまでの整理していない情報と一度別れることができて、せいせいした」 (P.5)

そのスマートでない、つまりごちゃっとした状態が良いか悪いかというのは人によりけりですが、不満を持ちながらも出来ない(何もしないと言うより多いと思われます)ぐらい、「情報洪水」に飲まれている状態の怖さを感じます(し、自分もなることがあるので実感します)

とかくコンピューターのおかげで更に膨大な情報が手に入る -> やりくりしないといけない時代になったのにもかかわらず、書類を出しては山積みにして見ない状態。後(という時間)で何とかしようと思った時点で、そんな時間はなかったということです。

情報はパソコンに集まるのに、それを利用しやすいように動かそうとすると、人間の側に多大な手間が生じてしまう。それが「パソコン単体では不自由である」ということの本質なのです (P.9)

で、結局は仕組みとその仕組の自動化を何とかしようというのがこの本の流れだったと思います。その仕組の例としては以下があります

  • 論文のサーベイには、論文検索サイト + 検索ワードでフィード生成 + RSSリーダーで見る
  • タスク管理を行う, (Evernote, GTDがおすすめされていましたが、自分もお勧めです)
  • Googleドキュメントで、共著者と論文の協同執筆、電車のつり革にぶら下がりながら論文執筆(ちょっとこれは無理がある気がしますがw)
  • Mendeley + Dropboxを利用して論文のデータベース管理

本のタイトルでもある生産術というだけあって、クラウドサービスを多種に活用されています。

またクラウドサービスの良い所としてデータの存在をそれほど意識しなくても良い点を強調されています。

これは便利であることを通り越した、仕事のスタイルの大きなパラダイムシフトといえます。これまではメールは研究室のパソコンのみで読んでいたという人が、自宅であれ、通勤中に立ったままであれ、どこからでも観覧・編集することができるようになります。

データは基本的にクラウド側にあるわけで、同期とどの端末からもアクセスできる概念のおかげで、それを意識する必要もなくなります。

データの存在は思った以上に重くののしかかってしまうもので、管理を意識しただけでずいぶん億劫になると思います(自分も急に管理しようとして動こうとするととたんに面倒になる人です)

データが命の研究者に取っては日頃の管理を疎かにすると冒頭と同じだからです。

クラウドサービスなら「箱」が決まり、中での運用も比較的に仕組みが決まってます。安心感が違うわけです。(Evernoteは別かも知れませんが、やることを決めることは出来ます)

クラウドが提供するサービスを利用することで、理系研究者の仕事場には、これまでの限界を超えるいくつもの風穴が空きます。そのすべてが「時間の節約」という形で私達にメリットをもたらすのです。上手に活用することで、クラウドは理系研究者の作業の効率を何倍にも向上させてくれます。 (P.11)

感想として

ただサービスを紹介するのではなく、著者の研究活動の経験を例に取られているので納得が行く解説でした。

時間に対して厳しくなり続ける最近の世の中に立ち向かうため、時間が欲しくてたまらない研究者の方にはぴったりかと。理系の研究者とされてきましたが、ビジネスマンや主婦の方、学生の方。と言うかだれでも参考になる内容だったかなと思います。

1日で読めたので、朝購入して通勤通学途中のお供にどうでしょうか?

蛇足

そういえば最近はTexのクラウドサービスも出てきたらしいです。いつでもTeX扱いたい方にはぴったりでしょうね。(自分は学生時代の時に導入しようとして挫折しました)

自分の普段のクラウド活用というと、Evrenoteに活動するあらゆることを大体突っ込んでしまった人で、GTDで運用してみて何とか日々をこなせるようになりました。(収入とかその辺はまだ課題多いのですが)

何らかの資料もGoogle Documents周りで済むものは済んでます。製造業系はまだMS Office文化なのでまだデータ管理が煩雑になることはあります。難しい。。。

GTDは誰にでもおすすめしたい、ライフスタイルの技術だなと感じています。

個人的な課題は、時間を大事に扱わないところ(実家で働いているのもあるという言い訳)があるので、ポモドーロテクニックで時間単位での集中力を良くしたいなあと試行錯誤中です。

ブログを書いたり、勉強する時間をもう少し出したいところです。

ちなみに, 関係させてもらってます ishilab.net でも、日頃から使うメールやMS Officeの扱いをある程度ぶった切って、Google+とGoogle Documentsに舵切ったりしてました。今のところいい感じになってきてるかなと。

その辺の話は追々やろうかと思います。